新・日本誕生はいいリメイク作品だった
先日、「ドラえもん 新・のび太の日本誕生」を観た。本当は劇場版ガルパンが観たかったのだけど、あいにく上映リストにはなかったのだ。
ドラえもんの声優陣が一新されたのは2005年。長年、大山のぶ代ボイスに慣れ親しんできた僕にとって、水田わさび演じるドラえもんには馴染めず、長い事スルーしてきた。が、とあるきっかけで「新・のび太の鉄人兵団」を観た事で新しい声優陣も悪くないのではないかと思い始め、以来機会がある度に新キャストによる大長編ドラえもんを観てきた。特に過去作のリメイクは当時の記憶を掘り起こしながら、ストーリー構成や演出を楽しむ事が出来た。中でも「日本誕生」は5本の指に入るほどお気に入りの作品だったため、期待するところも大きかった。
結論から言ってしまえば、「新・のび太の日本誕生」は原作の良いところをしっかり押さえつつ、過去作にて回収されなかった一部要素を上手に纏め上げた素晴らしい作品だった。
以下、簡単なレビューをしてみたいと思う。ネタバレを含んでいるため、まだ観ていない方は映画観に足を運んでから読んでいただきたい。
大長編ドラえもんについて
もはや説明は不要だと思うが念のため。
ドラえもんは不二子・F・不二雄原作の児童漫画であり、連載開始は1969年。
僕らのよく知る大山のぶ代ドラえもんのテレビ放送開始は1979年、大長編映画は1980年の「のび太の恐竜」を皮切りに、先日上映が開始された「新・のび太の日本誕生」まで36作品が公開されている。2005年には声優陣が一新され、翌年には「のび太の恐竜」のリメイク作品「のび太の恐竜2006」が封切られた。その後リメイク作品は「のび太の新魔界大冒険」、「新・のび太の宇宙開拓史」、「新・のび太の鉄人兵団」、「新・のび太の大魔境」、そして「新・のび太の日本誕生」の計7作品が制作されている。
リメイク作品に求めるもの
人によってリメイク作品に求めるものは違うと思うけど、僕は以下の2点が押さえてあれば概ね満足。
- 原作にあった細かな不満点の修正
- 作品を十二分に理解した上での追加要素
これを踏まえた上で、今作について振り返ってみたい。
「新・のび太の日本誕生」批評
タイムパトロールが出しゃばらない
「日本誕生」は確かに良い映画だったが、唯一無二の不満点は「事件を解決したのはタイムパトロールだった」ことだ。
雪山で遭難したのび太を助けたのもタイムパトロール、生き埋めになったドラえもん達を助けたのもタイムパトロール、ギガゾンビの野望を打ち砕いたのもタイムパトロール・・・
しかし今作におけるタイムパトロールの仕事はギガゾンビの逮捕とペガ達の引き取り、この2点のみである。
雪山でのび太を助けたのはペガ、グリ、ドラコの3匹だった。光族は暗闇族に立ち向かい、己の力で自由と平和を勝ち取った。ギガゾンビの放った手下を打ち倒したのはのび太の閃きだった。亜空間破壊装置を破壊し、ギガゾンビの野望を打ち砕いたのはククルの勇気だった。
地下洞窟に生き埋めにされ絶望に身を浸すのみであった過去作に対し、今作ではのび太達やククル、光族の活躍がしっかりと描かれていた。この点だけでも大満足である。
「家出」をきちんと描き切った
本作品における冒険のきっかけはのび太達の「家出」だった。過去作ではククルに出会ったことで冒険の目的が光族の危機を救い、ギガゾンビの野望を打ち砕くことにあっさりと変わってしまった。だが今作では野比家の親子関係を掘り下げた描写が目立つ。例えば家出初日、門限を破り夜中に帰ってきたのび太をママが叱るシーンがある。
「こんな遅くまでどこに行っていたの!」
平手を振り上げるママ。しかし、目の前でギュッと目を閉じ怯えるのび太を見て我に返った。手を止め、夕飯を食べるようのび太に伝える。のび太が戸惑うと、気恥ずかしさを隠すように、少し乱暴な口調で「早くしないと片付けちゃうわよ!」とけしかける。慌てて食卓に向かうのび太と、それを微笑ましく見守るドラえもんの姿があった。
また、ラストシーンでは家出のきっかけとなった0点の答案の復習を徹夜でやりきり、机に突っ伏して眠るのび太に対し、ママが「おかえりなさい」と顔をほころばせるシーンもあった。家出をしたのび太は、きちんと家に帰ったのだ。ここは本当に良いところだったと思う。
まとめ
「新・のび太の日本誕生」には「新魔界大冒険」のように無理矢理にお涙頂戴要素をぶち込んでくるでもなく、「新・大魔境」のような中だるみもなく、原作の空気感を損わずに新要素を織り込み、ストーリーを綺麗に纏め上げた良リメイクである。劇場での視聴をお勧めしたい。
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