漫画家・松本次郎の魅力を語りたい
東京で暮らした1年ちょっとの間、Twitterを通じて交友の幅が広がった。
漫画の話もした。本棚を見せてもらった事もあった。
だが、松本次郎を知っている人は一人も居なかった。
松本次郎を知って欲しい
この場で僕一人が騒ぎ立ててどうこうなるものじゃないし、
そもそも多くのファンを抱える氏の作品紹介なんて無粋だと思う。
これは、松本次郎作品の魅力について語りたい僕の自己満足だ。
それでも良いという方、松本次郎を知らないという方は是非続きをどうぞ。
早漏で申し訳ないが、先に結論をまとめたい。
松本次郎作品、3つの魅力
1.確かな画力に裏打ちされた小気味好い「雑さ」
人物や物体の輪郭は一本の線でなく、二本、三本の線が複雑に絡み合った線で表現されている。
この一見「雑」とも取れる画風は、時に暖かみや懐かしさを覚えさせ、そして時には
狂気を連想させるなど、多彩な表情を魅せてくれる。
2.難解な表現に隠された強い「メッセージ性」
氏の作中、物語冒頭で主人公が置かれる状況は基本的に混沌としたものである。
読者は、このカオスの中で繰り広げられる妄想や心理描写に面食らい、
時として物語の意味を見失うだろう。しかし、安心して欲しい。
混沌とした物語は見事に収束し、残されるのは一本筋の通った結末である。
張り巡らされた伏線の数々を見事に回収する構成力、それが氏の作品の一番の魅力である。
3.ジャンルに捕われない多彩な表現力
鬼気迫る戦闘描写、混沌に満ちた内面世界、ロシア映画のような静寂、そしてハードなエロス。リアリティあふれる世界観は、氏の豊富な表現力に支えられていると言っても過言ではないだろう。
「面白そうだけど、じゃあ何から読めばいいの?」
と上目遣いで僕を見つめるそこの貴方に、オススメの作品を紹介する。
革命家の午後&善良なる異端の街
氏の魅力を詰め込んだ傑作短編集である。様々な狂気の世界をご覧あれ。
特に後者に収録されている「わたしのお父さん」は、厳しい現代社会の中で懸命に家族を支える父親の皆様に是非読んで頂きたい。
未開の惑星
戦争による混乱の中、それぞれの夢を追いかける若者の青春群像劇。
暴力と狂気、肉欲渦巻く世界に翻弄されるクッキーとナオミ。
妄想に取り付かれながらも自分を見失わないコロ。
3人の下した決断が導くラストシーンは、涙無しには語れない。
熱帯のシトロン
時はベトナム戦争真っ只中の1960年代。
青年写真家・ソーマがドラッグとセックスに溺れ、行き着いた先は魔女の住む街・三月町。魔女の力を欲しいがままにし、街を支配する「ウサギ」を食い止めるためには、学者の持つ銀の弾丸が必要なのだが・・・。
ウサギ殺害のタイムリミットである「カーニバル」の描写は圧巻の一言。
この他にもフリージア*1(全12巻)、女子攻兵(3巻以下続刊)、地獄のアリス(4巻以下続刊)など、魅力的な作品が多数ある。
是非一度、手に取って読んで頂きたい。
リンク:松本次郎オフィシャルHP
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熱帯のシトロン―Psychedelic witch story (Vol.1) (F×COMICS)
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